嬉し恥ずかし

 

桐朋学園の教え子から演奏会のお誘いがあれば、都合さえ合えば、出来るだけ聴きに行ってやるようにしている。それは、在学中にろくな指導も出来なかったお詫びと、どれくらい成長したかを楽しみにして出かけていく。

 

演奏が終わり、ロビーなどで会えるときには、出来るだけ会って声をかけてから帰ってくるようにしている。そのロビーで会ったときが大変で、「わぁー、先生」と手を振りながら近づいてくる。周りは一瞬、止まってしまう。クラシックの演奏会には似つかわしくないスキンヘッドで色の黒い男が、「一体何の先生だ」と思っても仕方がない。

 

教え子たちは、ほとんどがクラッシック界のアイドルで、おじさんやおばさんのファンが多く取り囲んでいる。そのアイドルたちの先生とは、一体どんなものだという興味の目にさらされる。そしてよせばいいのに「高校・大学時代の恩師です」などと言おうものなら、この人が確かめるような目で見られてしまう。その上、音楽の話をしようと、話しかけてくる人までいる。これは困ったことで、「私は音楽に関しては全くの素人で体育を教えています」と答えるしかない。すると謎はまたまた深まる。何で体育の先生が演奏会に、そして何で恩師なのかと。

 

いやはや、クラシック界のアイドルたちも。男の子は最も青臭い時を一緒に過ごし、女の子は最も輝いている時を一緒に過ごしてきた、私にとっては男の子であり女の子だから仕方がない。

 

そういう嬉しくもあり恥ずかしくもある演奏会応援だが、教え子のためにそこはぐっと我慢して駆けつけるしかない。